2.主な眼の病気
④まぶたと涙道
ものもらい(麦粒腫)(ばくりゅうしゅ)
【原因】
俗に「ものもらい」といわれ、眼瞼(まぶた)に細菌が感染して生じる化膿性の炎症です。
【症状】
眼瞼(まぶた)に局所的な赤みが出現し、軽度の痛みや痒みを伴います。炎症が強くなってくると、赤み、腫れが強くなります。腫れた部分から自然に破れて膿が出ることがあります。
【治療】
抗生物質の点眼や内服を行います。化膿した場合は、消毒した針やメスなどで軽くさして、排膿したり切開して膿を出すこともあります。
霰粒腫(さんりゅうしゅ)
【原因】
眼瞼(まぶた)にあるマイボーム腺の出口が詰まって炎症が起き、やや硬いできものです。
【症状】
眼瞼(まぶた)が腫れます。痛みはありませんが、外から触れるとコリコリとしたシコリが出来ています。炎症を伴った場合は、麦粒腫と似た症状が出ることがあります。
【治療】
小さい物であれば、自然に吸収されることもありますが、大きい場合は、手術をして霰粒腫を包んでいる袋ごと摘出することが必要です。
眼瞼内反(がんけんないはん)
まぶたが内側に向いているために、まつ毛も眼球側に向いてしまう病気です。
多く見られるのは高齢者の下まぶたに多い「老人性内反」です。これは、まぶたを閉じる筋肉(眼輪筋)の収縮によって起きたり、眼瞼構造の弛緩が主な原因で、まぶた全体が眼球側に向いてしまうものです。
【症状】
まつげが眼球に当たって、角膜を刺激するので、「流涙、まぶしい、目ヤニが出る、ゴロゴロする」などの症状が現われます。さらに角膜が傷つくと痛みや視力障害が起こり、場合によっては細菌が感染して、角膜潰瘍を起こすこともあります。
【治療】
痛みも強いために、手術が必要です。手術には、まぶたを切開して瞼板に縫いつける方法もありますが、眼輪筋そのものを切除したり、縫い縮める方法を用いる場合もあります。
さかさまつげ(睫毛乱生)(しょうもうらんせい)
いわゆる逆さまつ毛のことで睫毛が外ではなく眼球の方を向いている状態です。
【症状】
まつ毛の並び方が不揃いで、角膜(黒目)に触って刺激し、涙が出たりゴロゴロしたり、充血したりします。
【治療】
成人の場合は、抜毛しても2~4週間ほどで再発してしまうので、根治療法としては、少数なら毛根を電気分解し、多ければ手術によってまつ毛を外へ向けます。
眼瞼下垂(がんけんかすい)
上まぶたが垂れ下がって、上がらなくなる状態を「眼瞼下垂」といいます。先天性のものと後天性のものがあり、先天性が約80%を占めます。
後天性眼瞼下垂は、加齢によって起こる「老人性」が多いのですが、なかには「動眼神経まひや交感神経まひ、筋疾患、まぶたの腫瘍」などの原因で起こっている可能性もあります。 「動眼神経まひ」は、高血圧や糖尿病などによる循環障害のほか、脳腫瘍や脳動脈瘤など、生命にかかわる病気が原因で起こっていることもあります。動眼神経まひで眼科を受診し、糖尿病がわかったり、脳出血が起こる前の脳動脈瘤が発見されることもあります。
【症状】
まぶたが重い、夕方になるとまぶたが開かない、肩凝り、交感神経の緊張(ミュラー筋を収縮させるため)なども起こります。
眼瞼下垂症は程度の差はあれ、多くの老人で起こるので老人性眼瞼下垂症と呼ばれます。しかし、若年者でも、まぶたを擦る習慣がある人は、早く腱膜性眼瞼下垂症になることがあります。
【治療】
最も多い先天性眼瞼下垂では手術が主体です。重症の下垂では視力が障害されることもあり、早期の手術が必要な場合もあります。
そのほかのものは、症状の程度により手術するかどうか決定します。眼科手術後や脳梗塞後に起きたものは、自然に回復することも多いので数カ月様子をみます。重症筋無力症では薬物療法が主体です。
鼻涙管閉塞・涙嚢炎(びるいかんへいそく・るいのうえん)
【症状】
鼻涙管閉塞では、泣いてもいないし眼の痛みもないのに、常に涙が出て止まりません。涙嚢炎になれば涙に加えて、常に目やにも出ます。時には、まぶたから頬、鼻部にかけ、痛みを伴って発赤、腫脹し、発熱などを伴うこともあります。
【治療】
先天性鼻涙管閉塞の場合は、細い針金(ブジー)を涙点から鼻涙管に刺し込み、閉塞部を突き破ります(鼻涙管開放術)。涙嚢部を毎日マッサージすることなどで自然に閉塞が開放されることもあります。
後天性鼻涙管閉塞の場合は、涙嚢にうみの貯留が認められなければ、閉塞部をブジーで開放します。これだけではほとんどの場合は再び閉塞するため、細くて柔軟なシリコン性のチューブを上・下涙点から鼻涙管に挿入し、鼻涙管内腔を確保して1カ月から3カ月ほどそのまま留置しておく方法があります。それでも治らない場合は、DCR等の手術(涙嚢鼻腔吻合術:鼻涙管と鼻腔(鼻の奥)を直接つなぐ手術)を行うこともあります。
眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)
眼球がおさまっている骨で取り囲まれたスペースを眼窩といいますが、その部の脂肪組織を中心として強い炎症が起きた状態を眼窩蜂窩織炎といいます。
【症状】
急に眼が赤くなり、まぶたもはれて赤くなり、痛みを伴います。まぶたを触るとよりいっそう痛く、時には眼が飛び出してきます(眼球突出)。眼が動きにくくなり、物が二重に見えたりします(複視)。
【原因】
急性の細菌感染で、黄色ブドウ球菌が起炎菌として多いといわれています。副鼻腔炎(ふくびくうえん)や歯の周囲の感染巣などから、炎症が波及することが多いようです。外傷によって細菌が付着した異物が眼窩に刺さって、急激な炎症を起こすこともあります。
【検査と診断】
眼を見ただけである程度の診断は可能ですが、まず急性結膜炎と区別します。視力を測定し、眼球内に炎症が波及していないかを細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で観察します。緊急にCT検査を行い、眼窩内の病状を把握すると同時に、副鼻腔の状態をチェックすることも重要です。
炎症の原因となった菌の発見に努め、菌がわかれば薬に対する感受性検査を行います。
【治療】
緊急に入院し、広域抗菌薬の点滴静脈注射を行います。菌が特定されたら感受性のある抗菌薬を用います。副鼻腔や歯の周囲が原因のときは、それぞれの専門医に治療を依頼します。